PDO とは PHP Data Objects の略称で、アクセス先のデータベースの種類を意識することなく、アクセスできるようにしたクラスです。
今まではMySQLへ接続する場合は「mysql_connect」関数を使用し、PostgreSQLの場合は「pg_connect」関数で行っていました。 また、SQL実行などもそれぞれの関数を使用しなければなりませんので、データベースごとに異なるクラスを使用する必要があります。
しかし、PDO であればデータベースの違いを吸収してくれますので、同じソースで各データベースにアクセスできます。 (厳密な意味においては、データベース毎の特殊な処理とか、SQLの違いはありますが。)
この記事では、データベースへの接続とテーブルレコード取得を説明します。
テーブルに対しての登録(INSERT)、更新(UPDATE)、削除(DELETE)については、別の記事で説明します。
- データベースへの接続
- テーブルレコード取得(SELECT : query)の例
- テーブルレコード取得(SELECT : query)の複数取得の例
- テーブルレコード取得(SELECT : prepare, excute)の例
■データベースへの接続
そこで、先ずは mysql データベースへの接続に付いて説明します。
PDOクラスでは、インスタンス生成を行うと同時に接続を行います。
PDOクラスのコンストラクタ(クラス生成時の関数)は以下の様な宣言になっています。
public PDO::__construct ( string $dsn [, string $username [, string $passwd [, array $options ]]] ) $dsn データソース名(Data Source Name)で、データベースに接続するために 必要な情報が含まれます。 $username ユーザ名 $passwd パスワード $options ドライバ固有の接続オプションを指定する配列 返り値: 接続成功時に PDO オブジェクトを返します。 エラー: データベースへの接続に失敗した場合 PDOException を投げます。
尚、データソース名(DSN)の指定は以下の様になります。
// DSN指定文字列 mysql:host=hostname;port=portno;dbname=databasename hostname データベースサーバが存在するホスト名 portno データベースサーバーが待機しているポートNO databasename データベース名
実際にデータベースへの接続を行うソースを見て下さい。 ホストは xampp と共にインストールした MySQL への接続を行っています。
尚、 Windowsコマンドプロンプトで実行するため echo 出力が文字化けしない様に、先頭でコンソール出力への文字コード変換用に 関数を定義しています。
最後の行で、接続を閉じるために PDO オブジェクト変数に null を設定しています。 この処理によって明示的にデータベースへの接続を閉じることが出来ます。 この処理が無くても、スクリプトの終了時にデータベースへの接続を閉じられますが、書いた方が無難かと思います。
<?php // Windowsコマンドプロンプトで実行するために、コンソール出力を UTF-8 ⇒ Shift-JIS 変換 ob_start(function($buf){ return mb_convert_encoding($buf, 'SJIS', 'UTF-8'); }); // MySQLデータベースに接続 $dsn = "mysql:host=localhost;dbname=pdo;"; $user = 'root'; $password = 'password'; try { // PDOクラス生成(データベース接続) $pdo = new PDO($dsn, $user, $password); echo "データベース接続OK\n"; } catch (PDOException $e) { // エラー発生 echo 'データベース接続ERROR:'.$e->getMessage()."\n"; exit(); } // データベースへの処理... // 接続を閉じる $pdo = null; ?>
これを実行すると以下の様に表示されます。
C:\xampp\htdocs\_test>php pdo1.php データベース接続OK
MySQL は起動されていて pdo と名付けられたデータベースは存在するので、接続OKと表示されます。
そこで エラーを発生させるためにデータベース名を間違ったものにしてみます。 5行目の「pdo」 を 「pdo1」 にして上記のソースを実行します。
C:\xampp\htdocs\_test>php pdo1.php データベース接続ERROR:SQLSTATE[HY000] [1049] Unknown database 'pdo1'
さらにパスワードを間違ったものにしてみます。 7行目の 'password' の中身を 'passwordx' にして上記のソースを実行します。
C:\xampp\htdocs\_test>php pdo1.php データベース接続ERROR:SQLSTATE[HY000] [1045] Access denied for user 'root'@'localhost' (using password: YES)
■テーブルレコード取得(SELECT : query)の例
まず最初に pdo データベースにテスト用のテーブルを作成します。 テーブルは商品マスタ的なものとし 「ID」「名称」「単価」のカラムを持つ簡単なものにします。
データベースを生成し、商品マスタ(tm_shohin)テーブルを生成後、数件のデータを登録しています。 これらの処理をコマンドプロンプトから mysql を起動し実行した結果が以下の様になります。
MariaDB [(none)]> CREATE DATABASE IF NOT EXISTS `pdo` DEFAULT CHARACTER SET utf8 COLLATE utf8_general_ci; Query OK, 1 row affected (0.03 sec) MariaDB [(none)]> use pdo Database changed MariaDB [pdo]> CREATE TABLE `tm_shohin` ( -> `id` bigint(20) NOT NULL, -> `name` varchar(100) DEFAULT NULL, -> `price` bigint(20) DEFAULT NULL -> ) ENGINE=InnoDB DEFAULT CHARSET=utf8; Query OK, 0 rows affected (0.50 sec) MariaDB [pdo]> ALTER TABLE `tm_shohin` -> ADD PRIMARY KEY (`id`); Query OK, 0 rows affected (1.34 sec) Records: 0 Duplicates: 0 Warnings: 0 MariaDB [pdo]> desc tm_shohin; +-------+--------------+------+-----+---------+-------+ | Field | Type | Null | Key | Default | Extra | +-------+--------------+------+-----+---------+-------+ | id | bigint(20) | NO | PRI | NULL | | | name | varchar(100) | YES | | NULL | | | price | bigint(20) | YES | | NULL | | +-------+--------------+------+-----+---------+-------+ 3 rows in set (0.00 sec) MariaDB [pdo]> set names cp932; Query OK, 0 rows affected (0.00 sec) MariaDB [pdo]> INSERT INTO `tm_shohin` (`id`, `name`, `price`) VALUES -> (1, 'パソコン001', 100000), -> (2, 'パソコン002', 202000), -> (3, 'パソコン003', 303000), -> (4, 'プリンタ001', 50000), -> (5, 'プリンタ002', 150000); Query OK, 5 rows affected (0.08 sec) Records: 5 Duplicates: 0 Warnings: 0 MariaDB [pdo]> select * from tm_shohin; +----+-------------+--------+ | id | name | price | +----+-------------+--------+ | 1 | パソコン001 | 100000 | | 2 | パソコン002 | 202000 | | 3 | パソコン003 | 303000 | | 4 | プリンタ001 | 50000 | | 5 | プリンタ002 | 150000 | +----+-------------+--------+ 5 rows in set (0.00 sec)
準備は整いましたので、PDOオブジェクトの queryメソッドを使ってデータを取得してみます。 (queryメソッドの説明は本家のマニュアルから以下となります)
// queryメソッド定義 public PDO::query ( string $statement ) : PDOStatement $statement 準備、発行する SQL ステートメント。 返り値: PDOStatement オブジェクトを返します。 失敗した場合は FALSE を返します。 PDO::query() は、一回の関数コールの中で SQL ステートメントを実行し、このステートメントにより返された 結果セット (ある場合) を PDOStatement オブジェクトとして返します。 複数回発行する必要があるステートメントの場合、 PDO::prepare() で PDOStatement ステートメントを準備し、 PDOStatement::execute() でそのステートメントを 複数回発行する方がより良いパフォーマンスを得られると実感するでしょう。 PDO::query() を次にコールする前に 結果セット内の全てのデータを取得しない場合、そのコールは失敗します。 PDOStatement::closeCursor() をコールし、 次に PDO::query() をコールする前に PDOStatement オブジェクトに関連付けられたリソースを解放してください。
この query メソッドにSQL文を渡し、返される PDOStatement オブジェクトの fetch メソッドでデータ取得を行います。 (queryメソッドの説明は本家のマニュアルから以下となります)
// fetchメソッド定義 public PDOStatement::fetch ([ int $fetch_style [, int $cursor_orientation = PDO::FETCH_ORI_NEXT [, int $cursor_offset = 0 ]]] ) : mixed $fetch_style レコードを呼び出し元に返す方法を制御します。 PDO::FETCH_* 定数のどれかで、デフォルトは PDO::FETCH_BOTH です。 $cursor_orientation スクロール可能なカーソルを表す PDOStatement オブジェクトの場合、 この値により呼び出し側に返される行を定義します。 $cursor_offset スクロール可能なカーソルを表すPDOStatementオブジェクトの場合で、 cursor_orientationパラメータが PDO::FETCH_ORI_ABSに設定された場合、 この値により 取得される結果セットの行の絶対位置が指定されます。 返り値: この関数が成功した場合の返り値は、取得形式によって異なります。 失敗した場合は常に FALSE を返します。
queryメソッドは第1引数しか使ったことが無く、通常でしたら引数無しでも十分です。 それでは、商品マスタから「id = 1」の行を取得し表示するソースを以下に示します。
<?php ob_start(function($buf){ return mb_convert_encoding($buf, 'SJIS', 'UTF-8'); }); // MySQLデータベースに接続 $dsn = "mysql:host=localhost;dbname=pdo;"; $user = 'root'; $password = 'password'; try { // PDOクラス生成(データベース接続) $pdo = new PDO($dsn, $user, $password); } catch (PDOException $e) { // エラー発生 die('データベース接続ERROR:'.$e->getMessage()."\n"); } // データ取得SQL(結果が1行しか返さない) $sql = "select * from `tm_shohin` where id = 1"; // SELECTクエリの実行 $pdostmt = $pdo->query($sql); // PDOStatementクラスの fetch メソッドで1行のデータ取得 $result = $pdostmt->fetch(); // データ表示 echo "id :".$result["id"]."\n"; echo "name :".$result["name"]."\n"; echo "price:".$result["price"]."\n"; // 接続を閉じる $pdo = null; ?>
これを実行すると以下の様に表示されます。
C:\xampp\htdocs\_test>php pdo2.php id :1 name :パソコン001 price:100000
変数 $result を print_r で見てみると以下の様になります。 カラム名とカラム位置のキーでデータの配列が設定されていることが分かります。
Array ( [id] => 1 [0] => 1 [name] => パソコン001 [1] => パソコン001 [price] => 100000 [2] => 100000 )
■テーブルレコード取得(SELECT : query)の複数取得の例
上記のスクリプトでは1件のデータのみの取得を行いましたが、1回目の fetch 処理の後、再度 fetch を行うとどうなるでしょうか?
では以下のスクリプトを実行してみます。
<?php ob_start(function($buf){ return mb_convert_encoding($buf, 'SJIS', 'UTF-8'); }); // MySQLデータベースに接続 $dsn = "mysql:host=localhost;dbname=pdo;"; $user = 'root'; $password = 'password'; try { // PDOクラス生成(データベース接続) $pdo = new PDO($dsn, $user, $password); } catch (PDOException $e) { // エラー発生 die('データベース接続ERROR:'.$e->getMessage()."\n"); } // データ取得SQL(結果が1行しか返さない) $sql = "select * from `tm_shohin` where id = 1"; // SELECTクエリの実行 $pdostmt = $pdo->query($sql); // PDOStatementクラスの fetch メソッドで1行のデータ取得 $result = $pdostmt->fetch(); // データ内容表示 var_dump($result); // 再度の fetch メソッド実行 $result = $pdostmt->fetch(); // データ内容表示 var_dump($result); // 接続を閉じる $pdo = null; ?>
これを実行すると以下の様に表示されます。
array(6) { ["id"]=> string(1) "1" [0]=> string(1) "1" ["name"]=> string(15) "パソコン001" [1]=> string(15) "パソコン001" ["price"]=> string(6) "100000" [2]=> string(6) "100000" } bool(false)
1回目の fetch 処理後は変数 $result には配列データが返っていますが、 2回目の fetch 処理後は false が返っています。 これは、2回目の fetch でエラーが発生したことを示しています。
指定されたSQL文は1件のデータしか返さないので、2回目の取得ではエラーが発生するのは当然です。
もし複数のデータを返すSQL文で、連続して fetch 処理を行う場合に $result の内容が false であれば、 データの最後まで来て終わったことを示します。 では、複数データを返す例を以下のスクリプトで示します。
<?php ob_start(function($buf){ return mb_convert_encoding($buf, 'SJIS', 'UTF-8'); }); // MySQLデータベースに接続 $dsn = "mysql:host=localhost;dbname=pdo;"; $user = 'root'; $password = 'password'; try { // PDOクラス生成(データベース接続) $pdo = new PDO($dsn, $user, $password); } catch (PDOException $e) { // エラー発生 die('データベース接続ERROR:'.$e->getMessage()."\n"); } // データ取得SQL(全てのデータを「id」昇順に取得) $sql = "select * from `tm_shohin` order by id"; // SELECTクエリの実行 $pdostmt = $pdo->query($sql); // PDOStatementクラスの fetch メソッドで1行のデータ取得 while ($result = $pdostmt->fetch()) { // データの取得と終りの判定を同時に行う!! // データが取得できた場合(データ表示) echo "id:".$result["id"]." name :".$result["name"]." price:".$result["price"]."\n"; } echo "end...\n"; // 接続を閉じる $pdo = null; ?>
これを実行すると以下の様に表示されます。
C:\xampp\htdocs\_test>php pdo4.php id:1 name :パソコン001 price:100000 id:2 name :パソコン002 price:202000 id:3 name :パソコン003 price:303000 id:4 name :プリンタ001 price:50000 id:5 name :プリンタ002 price:150000 end...
■テーブルレコード取得(SELECT : prepare, excute)の例
データ取得の方法は query メソッドを使用する他に、 prepare, excute メソッドを使用する方法があります。
// prepareメソッド定義 public PDO::prepare ( string $statement [, array $driver_options = array() ] ) : PDOStatement $statement 有効な SQL 文のテンプレート $driver_options この配列はこのメソッドによって返される PDOStatement オブジェクトに対して 1 もしくはそれ以上の key=>value の組を含みます。 返り値: データベースサーバーが正常に文を準備する場合、PDO::prepare() は PDOStatement オブジェクトを返します。 もしデータベースサーバーが文を準備できなかった場合、 PDO::prepare() は FALSE を返すか PDOException を発行します (エラー処理 の方法に依存します)。
このメソッドで指定するSQL文のテンプレートは、後から指定される値で置き換えされるパラメータ識別子を含むものになります。 以下にその例を記します。
// 名前付きパラメータを用いて SQL ステートメントのテンプレート select * from `tm_shohin` where id >= :id1 and id <= :id2; // 疑問符パラメータを用いて SQL ステートメントのテンプレート select * from `tm_shohin` where id >= ? and id <= ?;
名前付きパラメータのSQLは「:id1」「:id2」がパラメータで、疑問符パラメータのSQLは2個の「?」マークがパラメータです。
尚、このSQL文を prepare メソッドで実行し、返された PDOStatement オブジェクトの excute メソッドでパラメータを指定し、 SQLの実行を行います。
// executeメソッド定義 public PDOStatement::execute ([ array $input_parameters = NULL ] ) : bool $input_parameters 実行される SQL 文の中のバインドパラメータと同数の要素からなる、値の配列。 すべての値は PDO::PARAM_STR として扱われます。 ひとつのパラメータに対して複数の値をバインドすることはできません。 例えば、IN() 句の中のひとつのパラメータに対して 2 つの値をバインドすることはできません。 返り値: 成功した場合に TRUE を、失敗した場合に FALSE を返します。
それでは、名前付きパラメータと疑問符パラメータを用いた場合のスクリプトを以下に記します。
<?php ob_start(function($buf){ return mb_convert_encoding($buf, 'SJIS', 'UTF-8'); }); // MySQLデータベースに接続 $dsn = "mysql:host=localhost;dbname=pdo;"; $user = 'root'; $password = 'password'; try { // PDOクラス生成(データベース接続) $pdo = new PDO($dsn, $user, $password); } catch (PDOException $e) { // エラー発生 die('データベース接続ERROR:'.$e->getMessage()."\n"); } // データ取得SQL(名前付きパラメータ) $sql = "select * from `tm_shohin` where id >= :id1 and id <= :id2 order by id"; // SELECTクエリのprepare $pdostmt = $pdo->prepare($sql); // SELECTクエリのパラメータに実際の値設定 $pdostmt->execute(array(":id1" => "1", ":id2" => "3")); // PDOStatementクラスの fetch メソッドで1行のデータ取得 while ($result = $pdostmt->fetch()) { // データが取得できた場合(データ表示) echo "id:".$result["id"]." name :".$result["name"]." price:".$result["price"]."\n"; } echo "end...1\n"; // データ取得SQL(疑問符パラメータ) $sql = "select * from `tm_shohin` where id >= ? and id <= ? order by id"; // SELECTクエリのprepare $pdostmt = $pdo->prepare($sql); // SELECTクエリのパラメータに実際の値設定 $pdostmt->execute(array(0 => "1", 1 => "4")); // array("1", "4") でもOK // PDOStatementクラスの fetch メソッドで1行のデータ取得 while ($result = $pdostmt->fetch()) { // データが取得できた場合(データ表示) echo "id:".$result["id"]." name :".$result["name"]." price:".$result["price"]."\n"; } echo "end...2\n"; // 接続を閉じる $pdo = null; ?>
これを実行すると以下の様に表示されます。
C:\xampp\htdocs\_test>php pdo5.php id:1 name :パソコン001 price:100000 id:2 name :パソコン002 price:202000 id:3 name :パソコン003 price:303000 end...1 id:1 name :パソコン001 price:100000 id:2 name :パソコン002 price:202000 id:3 name :パソコン003 price:303000 id:4 name :プリンタ001 price:50000 end...2
よほどのことが無ければ「疑問符パラメータ」は使用しないと思います。「名前付きパラメータ」の方が分かりやすいと思います。
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